箕と御井?
御井・木俣との関連
爾佐の加志能為社
orig: 2002/12/24

赤坂憲雄著『東西/南北考』(岩波新書)に興味ある記事があった。農具の「箕(み)」に関することである。

「(東北の)箕作りは山の樹木を材料とする。・・・わらじを履いて木に登るな、二股の木は伐るな、お産の話はするな、といった禁忌が数多くあった。」

『民俗学事典』の「箕」の項から、いくつかの事例を引いた中に

  • 難産の時には、屋根のうえに鞍を置いてまたがり、箕をかぶって産婦の名を呼ぶ
  • 井戸に箕を半分ほど見せて、願い事がかなえば全部見せる
  • 昼間、夫婦が同室しているときには、門口に箕を立てる
  • などとし、「箕そのものに呪術的な力があると信じられ・・・。妊娠や出産に関わるもので」とあり、さらに「男と女のちぎりにたいして、どうやら箕が深くかかわるのである。」「箕がある文脈におかれたとき、どこか妖しい性の匂いを立ち上らせることは否定できない」と続く。

    この一連に興味をもったのは、箕が御井、木俣と深層でつながりそうだからだ。すなわち

  • 箕と御井は音の類似
  • 箕と木俣が持つ性的な意味合い
  • である。(参考: 爾佐の加志能為社

    但し箕と御井を関連づけるに関して言語学的には問題がある。すなわち「箕」は乙類のミであるに対して「御」は甲類なのだ。箕の読みに関して倭名抄では「美」と書いており「美」なら甲類なのだが、「浦み」(浦の回り)などというときに「浦箕」という万葉集用例があって、浦み、の場合のミは乙類なのだ。倭名抄の時代には甲乙弁別が乱れていた(廃れていた)可能性も高く、倭名抄を甲乙弁別の根拠にするのは弱い、ということらしい。

    言語的には上記の問題があるが、一般民衆の習俗の場面では余りこだわらないでも良い、として良いであろうか。

    アイヌ語 *uy が 乙類に対応するか?

  • 箕 ミ乙 muy
  • 気 ケ乙 kuy 噛む。食のケ。気は キ乙 にも使われる
  • 神 ミ乙 kamuy
  • 箸 シ  pasuy (シには甲乙の別無し)
  • あと、atuy, suy, puy, nuy, ruy, tuyなどの対応は???
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