三國史記高句麗地名各論
「含」と「達」を調べる
orig: 2004/07/31
rev1: 2004/08/02 含を追加

「烏斯含達」を従来のように「烏斯含・達」と区切るのではなく「烏斯・含達」と区切ることの正否をチェックしよう、というのが発端。「達」はtarあたりの音と考えられ、意味は「高い」「山」の周辺である、と考えられる。用例調べておこう。結論的には「息達=土山」を参照して「含達=岩山」があり得よう、ということになる。「含」が「岩」につながるのはガンに近い音同士であるからである。参照:[74卓踏城(一云租波衣、一云巖郡)]
#新羅版地名*本高句麗巻37記事
「達」が語尾にあり「山」の意味が相応しいもの
20 振威縣 *釜山縣 [20釜山縣(一云松村活達)]  
45 功成縣 *功木達縣 [45功木達(一云熊閃山)]
48 兎山郡 *烏斯含達縣 山=達だから兎=烏斯含(ウシガムあたり→ウサギ)(板橋53) 各論へ:兎疑●
77 土山縣 *息達 [77今達(一云薪達、一云息達)]
112 蘭山縣 *昔達縣 [123菁達縣(一云昔達)]
114 菁山縣 *加支達縣 [123菁達縣(一云昔達)]
117 山縣 *買尸達縣 
118 松山縣 *夫斯達縣 
144 童山縣 *僧山縣 [141僧山縣(一云所勿達)]
鴨緑水以北・・・
 大豆山城本非達忽大豆=ヒ?
 犁山城本加尸達忽犁=加尸 kar。からすき、なにも韓の鋤と捉えることもあるまい、外国語+自国語、という造語ではないか。
S24禦侮縣本今勿縣(一云陰達)★今因之
S41化寧郡本荅達匕郡(一云杳達)★今因之領縣一
「達」が語頭にあり「高い」の意味が相応しいもの
39 高烽縣 *達乙省縣 [39達乙省縣(漢氏美女於高山頭點烽火。迎安蔵王之処。故後名高烽)]:烽=乙 板橋B4
64 喬桐縣 *高木根縣 [64高木根縣(一云達乙斬)]
146 高城郡 *達忽 高=達、城=忽
↑のようであるから↓の「達」も「高い」であろうか
S3多仁縣本達已縣(或云多已)★今因之
S59大丘縣本達句火縣★今因之 越語:大=d'ak

上表から判るように
  1. 「達」は前置されて「高い」を意味し、後置されて「山」の意味と捉えることは良さそうだ。
  2. 新羅地名にも「達」が使われている。新羅語と高句麗語に共通するものがある、と考えるよりは、高句麗地名を踏襲している、と考えておくのが良いのだろう
  3. 百済地名には使われていない(高句麗語と百済語の異同研究に一つの視点を与えるか)

    押  忽
    | /
 巌−−波衣 −−−峯
  \ /| \
   嵒 嶺−−−−登
      / \  /
     平   波兮
左図は波衣(ハイあたりの音)を中心とした諸文字のつながりである。例えば巌と嵒(ガン)を結ぶ線はそれらが通用している例があるという意味である。この「ガン」音をたよりに「含」字はこれらに連なるものであろう、と考えた。即ち「含」は「巌、嶺」などの意味になりうると。

倭國東北千里にあるとされる多婆那國(また龍城國)、その国王の名前が「含達婆」だが、この地名探求とは無関係であろう。

参考:『三国遺事』(巻1第4:脱解王)龍城國人(亦云正明國。或云夏國夏或作花廈國。龍城在倭東北一千里


高句麗語の研究の勉強TOPへ
HPへ戻る