色葉道 −はじめに
昭和63年、刊行した歌集「龍の落し子」の中に「いろは歌」をのせたが、その後も詠み続けて10年となった。「いろは歌」は仮名文字を重複使用しない歌で「色は匂へと散りぬるを・・・」の歌は、その最高傑作として古来広く国民に親しみよまれて今日に至っている。

「龍の落し子」上梓後詠み続け、「続・龍の落し子」として平成2年、小冊子にとりまとめ刊行したが、それらの歌には使った文字、送り仮名の誤りもあり、この度近作と一括して改訂再編することにした。

その歌はかな文字の歌遊びとても申すべく、納得、満足の出来ぬものばかりである。殊に、「い」とゐ、ひ、「う」とふ、「え」とゑ、へ、「お」とを、ほ、「じ」とぢ、「ず」とづ等同じ発音で使用される仮名をやむを得ず承知の上で使用したものも多い。また歌の意も諒解に苦しむところも多い。

歌は主として「いろは」48文字の7・5調4節とし、中には数首47文字のものもある。また「あいうえお」51字、50字の歌も加えた、区分毎の歌は詠んだ年代順にまとめた。

傘寿を過ぎた老人の暇つぶし、呆け防止の一助として詠み続けた歌で、今後も詠み続けようと思っている。

81歳の春を迎え、八十一は一と八を組み合わせると一八十で平となる。何とか穏無事に新年を送ろうと思い、生活の一端をお知らせするとともに、拙い歌をご笑覧願えれば幸いである。

やそちをこえて あきぬゆゑ
むゐにおくると ひまつふす
よみかさねけり ほめもせん
われしならへの いろはうた
八十路を越えて飽きぬ故
無為に送ると暇つぶす
詠み重ねけり褒めもせん
われ字並べの いろは歌
平成10年新春


深味春輝(1916-2005)
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