便所の神様
orig: 2001/06/30

八百万の神は日本語文化の中のみならず、アイヌ語文化にもあり、便所の神様までいらっしゃる。

ru溶ける、道、便所、など
rukari便所へ行く(普通のいい言葉)
asinru(男性用)便所<asir-ru(新しい・道/便所、であろうか。r-r は音便で n-r になる。(アイヌ語入門p171)
menokoru(女性用)便所
yayutek便所へ行く(上品な言葉)
rukariushi便所(良い言葉)用便に行く・習慣として皆がする・所
ru-kor-kamuy便所の神便所・持つ・神*
*何か急病人など出た場合は便所の神へ救いを求めるものだ。便所の神が一番動きが速いので助けてもらえるんだよ。(萱野辞書)
日本語の「厠」は「川屋」であろうから、天然の水洗便所だったのかも知れない。神武天皇后妃の「富登多多良伊須須岐比売命」の出生に関する説話も「厠」の文字はないものの文脈から川に用便していた様子がみえる。即ち
  • 「三島溝咋の女、名は勢夜陀多良比売(せやたたらひめ)其の容姿麗美しかりき。故、美和の大物主神、見感でて、その美人の大便為れる時、丹塗矢に化りれ、其の大便為れる溝より流れ下りて、其の美人の富登を突きき。爾に其の美人驚きて、立ち走り、伊須須岐伎。乃ち其の矢を持ち来て、床の辺に置けば、忽ちに麗しき壮夫に成りて、即ち其の美人を娶して生める子、名は富登多多良伊須須岐比売命と謂ひ、亦の名は比売多多良伊須気余理比売と謂ふ。故、是を以ちて神の御子と謂ふなり。」とまをしき。」
余談になるが、ここの伊須須岐と比売多多良伊須余理比売に出てくる「伎」と「気」が対応する部分のように見えるが前者が甲類のキ、後者が乙類のキ、であり、些か不審である。

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