このミコト名に関して些か考えた事があり、以前 NIFTYの会議室にアップした事がある物ですが、 書き直しましたので、ここで、お目に掛けたいと思います。
【I】考察の基となる諸点から述べます。
同様の記事は「先代旧事本紀」にもあって「亦、狗人とならむ」と言ったとあります。
これらの事から、「いぬ」とは、いぬ族の言葉では「私、自分、人」と云った 範疇の意味合いで、決して「犬」の意味ではなかったのではないだろうか。 「アイヌ語」で「アイヌ」とは「人」の意味ですしエスキモーの「イヌイット」も 「人」の意味です。
そして、「いぬ族」が「ニニギ族」に敗戦(或いは、敗戦に近い講和を)したとき、 誇り高き「いぬ族」は「ニニギ族」の言葉で「犬」と関連づけられた、と言うふうに、 思われます。ここで、「講和」と書いたのは、天皇家と九州の娘との婚姻が目立つ からです。即ち、
5.日本古代語では二重母音は避けられていた、よって、「佐伯」の発音は sa-e-kiではなく、sa-we-ki か sa-ye-ki か sa-he-ki であった 可能性が高い。従来の説では、「塞る・さえぎる」の意味に捉えられているようで、 sa-he-ki と考えられています。一方、「佐和(倭)気」は sawake でありましょうから、 sawekiを表記するのに充分近い。さて、sa-he-ki を「佐倭気」 と書くものか、もう少し研究が必要です。
6.「サンカ研究」田中勝也著(新泉社)に、「神社啓蒙」(寛文年間(1661-1673)成立)を引用して、
「赤衾伊努意保須美比古佐倭気能命」は次のように解読出来そうです。
赤衾 不明(但し、下記) 伊努 隼人のこと 意保須美 大隅で出身地を表すか 佐倭気 佐伯のことで隼人の別称・部民名か |
「赤衾」は判らない。しかし、Nifty の同好の志からのご指摘で、モン・クメール族に近い アカ族に、ニニギと同様に「真床追衾」で降臨したとの神話があるとの御教示を頂いた。 余りにも似過ぎているので、かえって語呂合わせの不安があるが、アカ族の神裔を意味して いるのだろうか?
まとめて、「赤衾伊農意富須美比古佐和気能命」の名義は「(アカの神族の後裔?)、 隼人、大隅出身の彦、佐伯部族の長」ではなかろうか。
【III】上記から出雲と大隅/隼人のウッスラとした関連の印象が出来てくる。 私は以前から、大山祇(ツミ)の子孫と名乗る者が出雲と南九州に居るのが、 気になっていたので、さらに考察を進めてみる事にした。
例としては、「神素戔嗚尊」「神吾田津姫(木花サクヤ姫の別名)」「神大市姫」 「神屋楯姫」「神皇産霊」等、が挙げられる。「神」が前置詞になっていることに 関しては神prefixでも論じておりますので、ご参照下さい。
5 出雲・スサノヲの周辺の理解に、隼人を導入すると新しい視点が開けそうで、 そういう研究が進む事を望んでます。また、島根県の「八雲立つ風土記の丘」では 1995年に「古代の島根と南九州」と銘打った特別展をやったそうで、 「良いところを突いている」と思いました。
● 上記でさえも既に想像が勝っているかも知れませんが、更に、
伊農/イヌ/狗/委奴(漢委奴国)/アイヌ/伊那 |
豊受神 | 食物の神 |
豊明 | 皇室の食事/パーティ |
十代物袋 | 石上神宮の祭壇に「十代物袋」と墨書した五角形の袋が榊からぶら下がって居ましたが、これも「トヨモツ」の入った袋なのでしょう。 [2007/11/24:石上神宮に電話で問い合わせたところ「トシロモノノブクロ」と読み、布留大神のご神徳を遷したもの、とのことで、私説のように「食物に関すること」ではない、とのことであった。古義が忘れられているのかも、と云いたいところである。] |
トヨタナモツ | 「上記」で神に献納する「十四」
(これも「トヨ」と読める)種類の穀物 |
とよおし | サンカでは食事 |
これらの例から、「トヨ」とは「豊か」と云うよりは、穀物、食物の意味であろう。
なお、「14」という数字は古事記の国生み神話でも、大八島に六島を加えて14にしている 風情があり何か意識される数値であったようにも見えます。
参考:アイヌ語 toy=畑、耕地、土 or=~の中、toy-or 畑の中(で)